2024年6月4日火曜日

今年も「Eスポ」の季節到来!

 こんにちは。技術部のチュータローです。

いつも修理ネタを紹介していますが、今回は「Eスポ」についてです。


eスポーツかと期待された方、すみません。eスポーツに関しては全く知識が

ありません。今回触れる「Eスポ」は、ラジオに深く関係する自然現象のお話

しです。


「Eスポ」とは「スポラディックE層」の略称。「層」というのは、地球の上空

に存在する「電離層」のことです。「スポラディックE層」は、春から夏ごろに

かけて、上空約100km付近に局地的・突発的(スポラディック)に発生する特殊

な電離層で、これが発生すると、FMラジオなどの電波がここで反射して、遠距離

に到達します。つまり、普段は地元局しか聞こえないFMラジオで、遠くのFMラジ

オ局が聞こえるようになります。この現象が起きると、ラジオの選局ダイヤルを

ちょっと回しただけでものすごい数の中国語や韓国語などのラジオ局が聞こえる

ようになり、ラジオが壊れたのかと思うほどの「お祭り」状態となります。


もっとも今はネット全盛の現代、遠距離のFMラジオをネットで聴くことは簡単

なので、「Eスポ」が発生して見知らぬ放送が聞こえたところで、驚きは少ない

かもしれません。しかし、ネットがなく情報に飢えていた昔は、「Eスポ」が

たまらない現象だったのです。季節限定で、時間帯は不定。突然出現し、気が

付くと消えてしまいます。ラジオだけでなく、若い時にやっていたアマチュア

無線の世界でも、普段聞こえない遠距離の方と交信できることになり、とても興

奮しました。

ただ「Eスポ」が発生すると、普段聴いているFMラジオに遠距離の他局が混信して

聞き取りにくくなる場合があり、この点ではちょっと厄介な現象でもあります。

(昔アナログTV放送の時代、1ch~3chはFMラジオに近い周波数だったため、

「Eスポ」が発生すると画面が乱れて困ったものでした。デジタルTVの今は、

もっと高い周波数に変わったので、そんなことは起きません)


そもそも、ラジオは地元の住民に向けて発信している放送ですが、AMラジオは

夜になると遠くの局が聞こえてきたりします。FMラジオは、通常は一日中地元

局だけ聞こえるところに、「Eスポ」発生時だけ遠くの局が聞こえたりします。

なぜ遠くの局が聞こえたり聞こえなかったりするのでしょう?それは、冒頭に

触れた「電離層」が関わっています。


ちょっと難しくなりますが、電波の伝わり方について、少し細かく説明します。

「電離層」は、地球を取り巻く大気の上層部にある酸素・窒素などの原子が、

太陽光線(の紫外線やエックス線)に当たって電離した電子やイオンが多数含ま

れている領域です。この領域に電波が当たると、反射する性質があります。地上

高い領域で電波が反射すると、とても遠くに電波が届きます。

出典:Wikipedia

電離層は、地上高や時刻により電子密度が異なっています。昔から便宜的に、

高度の低い方からD層、E層、F層と名付けています。

 D層 (60km - 90km)

 E層 (90 - 130km)

 F1層 (150km - 220km)

 F2層 (220km - 800km) 

出典:Wikipedia

電波の周波数により、各層の反射の有無が異なっています。

・超長波(<30kHz)<主な通信:電波時計>・・・電波は地上を這うように進むため、

 電離層の影響をあまり受けない。

・長波(30kHz~300kHz)<主な通信:潜水艦通信>・・・昼間はD層で反射。夜はD層

 が消滅するためE層で反射。

・中波(300kHz~3MHz)<主な通信:AMラジオ局>・・・昼間はD層で減衰。夜間はE層で

 反射し数百から1000キロ以上届く。

・短波(3MHz~30MHz)<主な通信:短波ラジオ局>・・・常にD層を通り抜け主にF層

 で反射。昼間と夜間ではF層の構成が変化して伝わり方が変わる。

・超短波(VHF)以上(>30MHz)<主な通信:FMラジオ局・TV局・Wi-Fi・携帯電話・GPS>

 ・・・電離層を透過する。


今回取り上げた「Eスポ」(スポラディックE層)は、E層の高度に相当する地上100km

程度の高度に突発的・局地的に発生する電離層で、D~F層より電子密度が非常に高

いため、通常D~F層で透過する超短波(VHF,30~300MHz)の電波を反射します。

出典:はちさんの通信系資格ブログ

https://telecomshikaku.com/1rikutoku-r01-10-musen-a-21/


「Eスポ」がなぜ発生するのかは、今も解明されていません。気象状況や太陽活動

とは無関係の様です。経験的に雲がどんよりした蒸し暑い日に起きやすい、と語る

人もいますが、科学的な証明には至っていません。今年は6/2に本格的な「Eスポ」

が発生しました。「Eスポ」は神出鬼没でいつ起きるかわかりません。昔は運を天

に任せるか、常時ラジオを聴いて発生を把握するか、程度しか認識できませんでし

た。今は情報通信研究機構(NICT)宇宙環境研究室が、レーダー(イオノゾンデ)

を用いて地表から上空に電波を発射し、電離層で反射して地表面に戻ってくるまで

の時間を測定(5分単位)して、電離層の高度と反射強度の検出結果をグラフ化した

ものを公開しています。

https://wdc.nict.go.jp/Ionosphere/realtime/ISDJ/ionospheric-alert.html


6/2に東京都国分寺市で測定された電離層観測データのグラフを転載します。

一番右下のグラフで赤いプロットが上方まで盛り上がっている時が「Eスポ」

発生時ということになります。私はこのサイトを見て「Eスポ」発生を確認し、

FMラジオを聴くようにしています。

皆さんも「Eスポ」に興味あれば、ぜひFMラジオで遠くの局を聴いてみて下さい。

では。

0 件のコメント:

コメントを投稿