2022年5月6日金曜日

手芸用アイロンの修理

 こんにちは。技術部のチュータローです。


妻が、ネットオークションで手芸用アイロンを入手したが、電源を入れても動作しない

ので見てほしい、とのこと。

手芸用アイロンという存在を初めて知りました。1998年製、長さ26cm・横6cm、80W。

普通のアイロンがけには非力ですが、手芸作業時のごく狭い領域のしわ伸ばしに

便利とのこと。いわゆる鏝(コテ)の形をしたタイプが欲しいがメーカーの現行製品

には存在しないため昔の中古品を入手したとのこと。「通電確認済み」とあったそう

ですが、結果的には故障品をつかまされました。

返品もできる様ですが、入手しにくい製品なので、直して使えるならそうしたい、

との妻の希望で、とりあえず分解して状況を見てみることにしました。

ちなみにコンセント部分にテスターを接続してスイッチ(温度調整のスライド機能

を兼ねる)を動かしても、電線をいろいろ動かしても、抵抗値は∞(導通なし)で

した(写真はありません)。断線している可能性が高いです。


※お断り

 以下の内容は、個人での修理をお勧めするものではなく、この文章を基に修理したこと

 により発生した、如何なる負傷・損害等の責任は負いません。

 一般的に、温度ヒューズが交換されるように機器は設計されていません。また温度

 ヒューズが切れるほどの異常加熱が発生すると、機器の絶縁が劣化している可能性が

 あります。

 もし個人で機器を分解・再組立てし、また温度ヒューズを交換するなどして修理する

 場合は、メーカー保証を受けられず、異常動作する可能性もありますので、自ら

 リスクを負う必要があります。


それでは、分解します。外してほしそうなネジがハンドル裏部分に1個。

これを外しましたが、これだけでは分解しませんでした。よく見ると、外せそうに見

えたスイッチ周りのカバーを注意深くこじ開けて外すと、もう一つネジが現れました。

このネジを外すと、本体上部が簡単に外れました。電源端子と耐熱被覆線が現れました。

ここで発熱体を固定している3本のネジと、耐熱被覆電線を止めている2本のネジを

外すと、本体下部から発熱体が外れました。中央の黒い歯車の下の部分は、温度調整

スイッチを動かすと回転する、いわゆるサーモスタットです。歯車は外します。発熱体

の右端で、白い短い円柱2個が上下にあるのは、ニクロム線の両端ですね。そして、

発熱体右下に横たわる白く長い部分は絶縁体のチューブで、その中に温度ヒューズが

隠れています。

それでは、この発熱体の断線箇所を調べます。サーモスタットを回しながら耐熱被覆

電線の両端をテスターで測ると、抵抗値は∞(導通なし)でした。この発熱体のどこか

に断線箇所があります。

次にサーモスタットの両端をテスターで測ります。回転部分をある程度回すと導通しま

した。サーモスタットは生きています。

次に温度ヒューズの両端をテスターで測ると、抵抗値は∞(導通なし)でした。ヒューズ

が切れています。これが故障原因でした。なお、写真を撮っていませんが、ニクロム線

両端を測定すると抵抗値があり、ニクロム線は生きていました。

温度ヒューズのリード線片側のネジを外して被覆を取り、温度ヒューズを露出させました。

この温度ヒューズの印字を見ると、仕様は228℃・250V・10Aでした。温度ヒュ

ーズは通常は銀色ですが、この部品は茶色に変色しています。過熱で正常に切れたのでしょ

う。温度調整を最大のまま長時間放置して切れたのでしょうか。アイロンですので、使い方

には要注意です。

温度ヒューズの片側は圧着スリーブでニクロム線と接続しています。圧着スリーブを緩める

のは無理だったので、圧着スリーブを含めて温度ヒューズをニクロム線から分離しました。

新しい温度ヒューズをネットで探すと、228℃品は見つかりませんでしたが、ELPAから

226℃・250V・10Aが2本入りで小売りしているのを発見しました。2℃違って

いますが、低い分には使用上安全だと考え、ヨドバシカメラで\275で購入しました。

温度ヒューズリード線片側をねじ止めし、被覆を付けます。もう片方のリード線は圧着

スリーブでニクロム線と接続します。



発熱体の耐熱被覆線の両端をサーモスタットを回しながらテスターで測ると、127Ω

でした。100Vだと78Wとなりますので、このアイロンの仕様とほぼ一致しました。

元通りに組み立てて、電源を入れると、無事発熱体が発熱し始めました。加熱される

まで待って、布をアイロンがけしてみました。しわが伸びました。修理完了です!

妻によると、今のところ問題なく使えているそうです。家庭平和に貢献!

以上です。

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